咽喉部から食道への違和感

中医学

咽喉部から食道への違和感を感じる人が増えています。
中医学では梅核気(ばいかくき)・咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)といいます。
この症状には身体面からと精神面からと両面から考えなければなりません。

まず身体から見てみます。胃には「降濁を主る」といい食物を小腸で吸収しやすい
ように強い酸によって粥状にしたものを下降させる働きがあります。

現代社会で一番問題になっているのがビールや炭酸飲料の大量冷飲によって「胃寒」の
状態を作ってしまっているということです。冷えが続けば蠕動運動に影響をあたえ腐熟
した食物を小腸のほうに送れなくなるわけです。

咽喉部~食道の違和感があって医院を受診すると、逆流性食道炎といわれ、決まって
プロトプンプ阻害剤が処方され症状がよくなっても継続して飲むよう処方されます。
胃酸が逆流して食道が炎症しているので胃酸の分泌を抑制するという実に簡単な理論。

胃酸の抑制によって当然消化酵素のペプシンの働きも抑制されます。胃酸・消化酵素の
働きを抑制するということは胃の本来の働きである塩酸による強力な殺菌と腐熟の
はたらきを奪ってしまい小腸での消化吸収に悪影響が出るはずです。

また医院では漢方も処方するのですが、半夏厚朴湯一本やりです。これで解決すれば
なんの苦労もありません。せめてギンギンに冷えたビールや炭酸飲料の多飲も注意して
いただきたいです。

咽喉部は理性と本能がぶつかりあう場所

聡明であればあるほど咽喉部の絡み、もつれ合いが多く症状は出やすくなります。
聡明は目や耳が聡(さと)いこと、ようするに頭の回転がはやい、単純な物知り。
「聡明反被聡明誤:利口な人は反って身を誤る」という言葉があるようです。

咽喉部の異常は智慧が必要なようです。
智慧があれば余裕をもって気持ちを平静に出来心地よく生きられる。

ところがこの智慧が常人には難しい問題です。前提条件として貪ぼらない、求めない、
怨むまない、悔やまない、気持ちを安静に保ち、落ち着きを持つ。

実際、不可能にちかいものですが、一つずつ身に着けていくようにしないと身体の
一番弱い咽喉部の症状はますます出てきます。

人間は生きていくなかで、他人の言論に対する怒りや自己抑圧、権威で大声を出し、
私たちに口を噤むようにさせ強制的に煮え湯を飲ませられるなど受け入れ難い
脅迫観念などを吞み込まなければなりません。

これらの事は中医学では陰寒大過といい咽喉部の緊張・痙攣・腫脹などの症状に関係して
きます。現在はこのような精神的要素が深く関係してきます。

咽喉部などの首回りは今後ますます問題になってくるでしょう。

簡単な養生では首回りにマフラーなどを巻き、寒邪を体内に侵入させないようにして
暖かなタオルで首を温めたり、簡単な運動などもお勧めしています。

薬剤では微小循環(頸動脈の流れを考え)丹参や脳底動脈拡張の働きがある葛根などを
弁証論治できめた処方に加えるようにしています。

生命沈思録2 参照文献

黄帝内経素問「上古天真論」からの考察

「・・・・・五七(35歳)にして陽明の脈衰え、面初めて焦(やつ)れ、髪初めて
堕(お)つ・・・・・」

女性は35歳から身体の老化が始まり、最初は陽明経(手陽明大腸経・足陽明胃経)が
老化していくことを言っています。

この両陽明経が梅核気ののどの部分の位置を通ることから、梅核気は陽明経に関係が
深く梅核気の人は便秘の人も多いようです。

よく使用される半夏厚朴湯ですが、七情が鬱結(うっけつ)し、気機不暢(ききふよう)
となり、気滞となり推動作用失調から津液が凝聚(ぎょうしゅう)して気滞痰凝となる
病理です。

半夏厚朴湯で効果が出ない場合、陽明経(手陽明大腸経・足陽明胃経)の冷えを考えて
みることが大事です。つまり大腸・胃の冷えから周囲の筋肉の凝りが梅核気に関係も
している。

温胃作用のある白豆蒄・縮砂・丁香また他には桂皮・乾姜など加えてみる。

実際弁証論治では
①「肺胃陰虚」②「肺脾気虚」③「肺腎陰虚」④「風熱犯肺」⑤「痰湿阻肺」
⑥「脾胃湿熱」⑦「肝気鬱結」⑧「肝火犯肺」などがあり簡単にはいかないのです。

気鬱と気滞

気鬱:精神的な理由が気鬱発症の直接の原因である。また精神的な理由が気鬱増悪の
重要な要因となる。症状としては、意欲の低下、疲れやすい、集中力の低下
嘆息(ためいき)、やる気がない、気分が落ち込みやすいなど、また人と会う
  のを嫌がる、不登校、出社拒否、自殺傾向。

  肝の疏泄失調が気鬱の基本病理。
  精神失調がはっきりしていれば気鬱と考えて弁証するのが妥当である。

  気鬱の治療原則は疏肝理気、処方は四逆散・柴胡疏肝湯

気滞:精神的な理由が気滞発生の唯一の病因ではない。痰湿、瘀血、食滞、気虚も
気滞発生の病因となる。局所あるいは全身に症状がみられるようになる。

   肺;胸悶感・咳嗽痰多  胃腸;胃晥部または腹部脹満と痛み・ゲップ・失気(おなら)
   肝;胸脇部の脹満と痛み・嘆息・梅核気 経絡;経絡の流注部に脹満と痛み・痺れ

   まとめると局所または全身の発症部位の脹満と痛み
   気滞の治療原則は理気・行気 薬物では香附子・木香・枳殻・陳皮

「中医学基礎」上海中医学編 神戸中医学研究会訳をみると、気滞のうちで精神的素因の
影響と関係あるものを肝気鬱結という。と出ていました。

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