めまいのご相談は女性がとても多いです。
西洋医学では中枢性めまいと末梢性めまいに分けて考えるようです。
中枢性めまい
中枢性は脳・小脳の梗塞、出血などによるもので、CTやMRIの診断がつき、早期に脳外科の
治療が必要です。主に中枢神経・高血圧が関係しています。
浮遊性のよろめく様な、非回転のふらつき感。
末梢性めまい
三半規管→(メニエール病)
耳石系(球形嚢・卵形嚢)→良性発作性頭位性めまい
前庭神経→前庭神経炎
自分の身体、または大地があたかも回転しているような感覚。強く吐き気を感じることがあり、
身体のバランスを失って倒れてしまうこともある。
中枢性の場合は意識障害、手足のシビレ感、麻痺など運動障害がまたは激しい頭痛がおこる。
これがなければ末梢性と考えられる。
まずは耳鼻科・脳外科など専門の受診でしょうが病院の検査などで異常がみつからず、悩んで
おられる方は漢方を試してみるのも選択だと思います。
「老中医の診察室」東洋学術出版社にはめまいの症例が多く大変参考になります。
その中で西洋医の楊医師が次のように言っています。
西洋医学のめまいのメカニズムでは『もろもろの眩暈、みな前庭の属す』ということに
なりましょう。
末梢性めまいの約40%が良性発作性頭位めまい(BPPV)だといわれています。
「症状」:回転性、頭を動かした時のみ起こる。じっとしていると30秒以内でおさまる。
何度も頭を動かしていると軽くなっていく。
「特徴」:更年期の女性に多い。(骨粗鬆が関係か?)
蝸牛症状(難聴・耳鳴り)などみられない。
「原因」:耳石(炭酸カルシウム)の粒が三半規管に入りリンパの流れを乱す。
耳石は三半規管に近い「耳石器」の卵形嚢由来だともいわれている。
「頭位治療」:医師が患者さんの目の動きを「フレンツエル眼鏡」で確認しながら
頭をゆっくり動かし、三半規管にたまった粒子を耳石器にもどす。
このように西洋医学では末梢性めまいは前庭系の異常とみますが、良性発作性頭位めまい
(BPPV)以外の60%は原因がはっきりしなく中医学の出番となります。
中医学では
①:自律神経機能のバランスがとれず、末梢血管の伸縮障害から前庭系に異常が生じる。
②:更年期の女性に多いということから骨粗鬆により耳石がもろく剥がれやすくなる
腎虚が考えられます。
③:血管から前庭系への血液供給の不足(酸素不足)
上のことから中医学治療を見ると、疏肝・理気・活血・補腎・補血・安神などが考えられ
ますが、その中でも活血・理気・補腎が中心になります。
対症療法としての健脾袪痰も大事です。
前庭神経炎によるめまい
「症状」:めまいは突発的に発症、強い回転性めまいが数時間から数日続く。
蝸牛症状(耳鳴り・難聴・耳閉塞感)を伴わない。これがメニエール病とのおおき
な違い。吐き気、嘔吐を伴うことが多い。めまいが始まったのちもふらつき感が
数週から数か月残存することもある。
「予後」:数日から1週間程度で症状の大半が消失する。ふらつき感が数か月あるいはそれ以上
継続することもあるが、時間とともに無くなる。
「原因」:不明、風邪の症状のあと出ることがあるのでウィルス感染が原因しているという
という説や血管障害などの説がある。
「西洋医学の治療」:メイロンの点滴、メリスロン・セファドール・メチコバール・ケタス
など末梢神経改善剤など使用、抗不安薬など使用。
漢方で治療する場合、良性発作性頭位めまいと同じく活血・理気・安神薬などが中心。
対症療法として抗ウィルス作用のある板藍根・白花蛇舌草・牛黄など使用します。
メニエール病によるめまい
メニエール病の原因の内耳には音を感じる蝸牛、回転運動を感知する三半規管、
直線加速度や位置を感じる耳石器があります。
メニエール病の原因とみられる内耳の病変
耳石器の剥がれた耳石の小片がリンパ液の流れを妨げる。結果として迷路内リンパ水腫は
内リンパ液の産生とリンパ嚢における内リンパ液の吸収の不均衡を生じると考えられる。
「症状」:難聴(特に低音域125Hz・250Hz・500Hzが障害される)低温の聞こえが悪い。
耳鳴り(片方)・めまい(突発的で回転性・持続性)・吐き気・嘔吐
メニエール病めまいの特徴
①:一般に特別な誘因なく発生し、吐き気・嘔吐を伴うことが多く、持続時間は10分程度
から数時間程度。めまいの持続時間は一元的に規定できないが数秒程度のきわめて
短い場合、メニエール病は否定的である。
②:めまいは回転性が多数であるが、浮遊性の場合もある。
③:めまい・難聴以外の意識障害・複視・構音障害・嚥下障害・感覚障害・小脳症状
その他中枢神経症状を伴うことはない。
④:めまいの発作回数は多様、家庭、職場環境の変化、ストレスなどが発作回数に影響
することが多い。
メニエール病の中医学的治療
「心下に支飲ありて、其の人冒眩に苦しむは沢瀉湯之を主る」
「冒眩」:頭に帽子をかぶっているような感じがしてめまいがする。
「仮令(たとえば)痩人、臍下悸あり。涎沫を吐して癲眩(てんげん)す。
これ水なり、五苓散之を主る」(沢瀉湯を内包しています。)
「癲眩」(てんげん):ひっくりかえるような激しいめまい。
「卒(にわかに)嘔吐し、心下痞し、隔間に水ありて眩悸する者は半夏加茯苓湯
之を主る。」(陳皮・炙甘草を加えると二陳湯)
「心下に痰飲あり、胸脇支満し目眩するは、苓桂朮甘湯之を主る」
金匱要略『痰飲咳嗽脈証并治』
中医学では内耳眩暈(めまい)「メニエール病」の主な病機を痰飲内停が上部(頭部)の
清竅(きょう・あな)を蒙ってしまうと考えているようです。(上蒙清竅)
多くは沢瀉湯・温胆湯の加減が使用されているようです。西洋医学の内リンパ水腫と考え
合わせると納得できます。
また痰飲に肝気上逆などが絡んでいる場合には旋覆代赭石湯加減などが
「実用中医内科学」上海科学技術出版社などで紹介されています。
弁証論治ではこの他「腎精不足」「痰濁中阻」「気血虧虚」「肝陽上亢」など
他にもいろいろあります。一度ご相談ください。
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