喘息≒哮喘  漢方で西洋薬から離脱を目指す 

中医学

「およそ哮は声響を以って名づけ、喘は気を以って言う。
それ喘息し喉中鶏声の如きなる者、之を喉といい、気促し喉中連続して以って
息する能わざる者、之を喘という。」医学正伝

中医学ではゼイゼイ音をたてて息することを「哮」といい、肩を上下して呼吸する
息苦しい状態を「喘」といって分けています。

哮・喘ともに呼吸が苦しいというのは両者に在りますが、鶏声(ゼイゼイ音)は
哮の特徴的な症状です。

中医内科学などでは哮・喘を分けて分類し使用する処方もそれぞれですが、
実情は一緒に症状がでてくることが多いので喘息≒哮喘として考えていくことに
します。

特に中医学的考えですが、肺気は呼吸によって清気となり五臓六腑に送り続けます。
(西洋医学的に考えると、各細胞に酸素を送り、逆に二酸化炭素を持ち帰るような
 働きでしょうか。)

ここで中医学独特な考えですが清気は下降して腎に蓄えられ、腎の力で収斂されて
腎精の供給源になります。

腎虚で清気を蓄えられないと、もともと軽い清気が上昇して、下降してくる清気と
ぶつかり合い乱れ無形の痰による喘息の症状が出ます。(特に吸気が苦しい)

また西洋医学では、喘息の原因は気道の狭窄と炎症ととらえていますが中医学では
「喘に夙根(宿根)あり、寒に遇いて即ち発し、或いは労に遇いて即ち発する者、
亦哮喘と名づく。」「景岳全書・喘息」

つまり中医学では肺に潜伏した伏痰が根本原因としています。それで治療には
「生痰の源」の脾、「貯痰の器」の肺、津液を主る腎が関係してくることになり
ます。最近は肝の気機失調(自律神経系)も考えなければならないと思います。

哮喘≒喘息を急性期と慢性期に分けて治療

哮証(寒痰):痰は清稀(透明或いは白色希薄)咳嗽を伴うこともあるが
       甚だしくない。口渇為し、ある場合は喜熱飲、舌苔白滑~白膩
       頭痛身痛、悪寒発熱などの表証を伴うこともある。

「治法」:温肺散寒・豁痰平喘
「代表方剤」:射干麻黄湯
       他に小青龍湯・華蓋散・桂枝加厚朴杏子湯・蘇子降気湯など

哮証 (熱痰):痰は黄色あるいは白色粘稠、喀出しにくい、咳嗽顕著、口渇喜冷飲
       面紅、尿短赤、便硬、舌質紅、舌苔黄~黄膩

「治法」:清熱宣肺・化痰降逆
「代表方剤」:定喘湯
       他に麻杏甘石湯・麻杏止咳錠・小陥胸湯など
       また補助に陰を補う目的で麦門冬湯・八仙丸などの併用は効果的

「喘証」:
    「風寒襲肺」:麻黄湯加減 「表寒裏熱」:麻杏甘石湯加減
    「痰熱鬱肺」:桑白皮湯加減「痰濁阻肺」:二陳湯合三子養親湯加減
    「肺気鬱痹」:五磨飲子加減

これらがありますが「哮証」と大きく代わることはなく日本で販売されている製剤で
十分可能と考えています。
漢方の哮喘の治療は緩解期が特に重要と考えます。

慢性(緩解)期の治療

喘息の治療にはこの時期がとても大切です。中医学の考え方を理解し根本治療に
取り組んでいただきたいです。「腎」「肺」「脾」をこの期間に鍛えておきたいです。
特に「補腎」は特に重要だと思います。「臨床 中医学各論」張 瓏英

ここで紹介されている(筆者経験方)は非常に参考になります。

六味地黄丸+玉屏風散加麻黄・杏仁貝母・枇杷葉・麦門冬・亀板・牡蛎
麻黄・杏仁:有名な鎮咳の薬対
貝母・枇杷葉・:潤肺化痰止咳
麦門冬・亀板:補陰
牡蛎:鎮静収斂

これに症状によっていくつかの加減がされています。六味丸も重要ですが
玉屏風散は衛気の働きをあげ、体表を保護し、外敵の侵襲を防ぐ役目をして
います。衛気は免疫力ととらえることも出来ます。上焦の肺の宋気、中焦の
脾の栄気、下焦の腎気の三つの気の総合力で形成されます。

黄耆・白朮・防風の三つの生薬だけで出来ていますが、効果はすばらしいもの
があります。この衛気の力をあげるのも腎気が主役を務めています。
六味丸の他にも補腎薬はいろいろあります。最適なものを選ぶ必要があります。

この慢性(緩解)期の治療にも日本で製剤化された製品やエキス製剤でかなり
応用できます。ぜひ西洋薬からの離脱を実現したいですね。 
    

コメント