異常の構造 木村敏 「合理性の根拠」

精神疾患

合理性はいかなる論理でもって、非合理を排除するのであるか。次に、合理性の枠内に
ある「正常者」の社会は、いかなる正当性によって非合理の「異常者」の存在をこばみ
うるのか。

通常、精神異常者を「非合理」とみている「合理」は相互交換性ではなくて、絶対的な
一方的従属性である。

もしここで、合理と非合理はなんら反対の概念ではない。したがってその一方が他方の
否定ではないというようなそれ自体非合理な考えをもちだしたりするならば、「合理」の
概念そのものが根本的に成立しなくなり、したがってまた、それの反対語としての
「非合理」の概念も根底から崩れることになる。

「合理」の側からみると「非合理」はそれ自体独立の存在であってはならないのであって、
非合理は合理の否定としてのみ、つまり合理の成立に完全に従属した存在としてのみ、
その成立を許されるのである。

だから、「合理ー非合理」という概念の中に「捕獲」された「非合理」は、真に合理化を
を脅かす力を奪われて、合理に飼いならされた仮の非合理であり、いわば合理化された
非合理である。

ここの一部分だけでも自分たちが日常考えている「合理化」というものを真剣に考えさせられ
ます。

上の考えを証明するために私たちが中学の数学で教え込まれた「平行」の概念や三角形の
内角の和は180度ということが真理ではないというような非ユークリッド幾何学のような
問題が出てきます。

興味を持たれない方がほとんどでしょうが、私自身は深く興味を覚え引き込まれました。

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