人間は明日の気持ちがどのような状態にあり、いや現在より一時間先の心境が
いかに変わり他人に不可解な行動を起こしているかは保障できません。
天才といわれる作家はその心理をこのように表現するのかと漱石の「人生」という
文章に書かれている一部を紹介します。
“二点を求め得てこれを通過する直線の方向を知るとは幾何学上のこと。
吾人の行為は二点を知り、三点を知り、重ねて百点に至るとも、人生の方向を
定むるに足らず。・・・・・・・
吾人の心中には底無き三角形あり、二辺平行せる三角形あるを如何せん。
もし人生が数学的に説明し得るならば、若し与えられたる材料より人生が
発見せらるるならば、若し人間が人間の主宰たるを得るならば
若し詩人、文人、、小説家が記載せる外に人生なくんば、人生はよほど便利にして
人間は余程えらきものなり。
不測の変、外界に起こり、思いがけぬ心は心の底より出で来る。・・・・・・”
若い時、流し読んだはずですが、こんな表現が記憶にないということにショックを受け
、夏目漱石にさらに興味がわいています。
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